桜咲く!
さすがに三寒四温の日々が続きますが、梅から「咲きて継ぐべく」桜の開花が各地で話題となってきました。当初の休館予定の3月15日までの期間も過ぎ、明日香村では3月いっぱい休館してほしいということで、本当に空白の1か月となりました。万葉花カレンダー3月でご紹介している歌は、まさに桜の歌。
足代過ぎて 糸鹿の山の 桜花 散らずあらなむ 帰り来るまで (巻7の1212)
和歌山県の旧熊野街道は海南の藤代峠を越え、蕪坂峠を越えて有田川を渡り、有田市糸鹿から糸鹿山を越えて湯浅に向かっています。大和から紀伊へ向かう旅人が、峠の桜に出会った驚きと感動が、爛漫の桜が散るのを惜しむしばしの思いとして詠われています。
毎年犬養先生は3月の最終日曜日に「糸鹿の桜万葉の旅」と定めて、学生たちと天王寺駅に集合して午前8時半の特急くろしお号に乗り、私も何度か参加しました。犬養先生のおかげで「万葉の故地」として、みんなが意識するようになり、地元の方々は、感謝の意も込めて地元の得生寺(徳勝・・・ではなかった!(笑))の境内に犬養先生の揮毫によるこの歌の万葉歌碑を建立されました。
また、犬養先生のファンの方が糸鹿の桜の枝を持ち帰り自宅に挿し木をされたのですが、大きくなってきて「ぜひ明日香村で引き続き育ててほしい」と言うお申し出がありました。当時私は(岡本)犬養万葉顕彰会の会長をしており、役員の方々と相談をした後、飛鳥坐神社の飛鳥弘文さんにお願いをして境内に植えて頂くことになりました。飛鳥坐神社の階段を登り切った右手に大きく成長した桜の木、それが1枝の挿し木だった糸鹿の桜です。皆さんも神社に行かれた時にはご覧になってください。(しかし櫻花の咲いているのは見たことがないのです・・・。不思議!)
この旅は、万葉植物野外講座の講師、馬場吉久さんが引き続き毎年引率してくださっています。今年はコロナの影響で無理かもしれません。カレンダーの写真のような「山笑う」桜の装いに、万葉人と同じように私たちも心惹かれることです。