第17回万葉の歌音楽祭 大賞は次郎丸智希さんの「遣唐使ものがたり」!

9月16日(月)は敬老の日でした。国営飛鳥歴史公園石舞台地区「あすか風舞台」では、13時から第17回万葉の歌音楽祭が行われました。一次審査を通過された11組がこの日の本選に出場。それぞれに個性やこだわりの感じられる作品が次々と発表され、その素晴らしさに審査に関わったおそらくほとんどの人たちが大いに悩まれたことでした。今年が最終回であることも手伝って、共同通信社や奈良新聞社の取材もあり、大いににぎわい盛り上がりました。

結果、大賞(賞金5万円)は、「遣唐使ものがたり~萬葉に詠はれし遣唐使の運命~」を発表・演奏された次郎丸智希さん。遣唐使の万葉歌に阿倍仲麻呂の歌も加えた音曲に、物語としてのナレーションが添えられ、一次審査でも「音楽祭」と言うにはセリフのウエイトが大きくて「音曲」と言えないのではないかと物議がありましたが、実際の舞台では、音曲がより栄える演出として、1つの物語世界を作り上げておられましたので、聴衆も引き込まれました。結果的に優れた万葉世界の表現として、文句のない大賞でした。

 

 

 

 

 

 

 

明日香賞は惜しくも2番手となられた大西貴弘さん。自身のふるさと、香川県坂出市の「狭岑島の島の」という人麻呂挽歌を詠われました。万葉歌も作曲しにくい長歌ですが、歌の場面の展開と共に上手に作曲されていました。歌唱も声楽家と聞き、納得しましたが、万葉歌も歌唱もレベルの高い作品でした。

 

 

 

 

 

 

 

あとの9作品は甲乙つけがたく、選歌、音曲の楽しさ、抜群の歌唱力、物語の構築力・・・さまざまな要素は審査の票も分かれました。

 

 

 

 

 

 

 

今回の音楽祭が最終回と言うこともあり、審査員特別賞が「明日香川ものがたり」と「恋ひ恋ひて」の2作品が選ばれました。どちらも歌のフレーズが覚えやすく、審査の皆さんの耳に残る曲でした。

 

 

 

 

 

 

 

今年も力作ぞろいの音楽祭でしたが、うれしいことに、出場は逃されましたが一次審査に応募してくださった方だったり、かつて参加されたOBの方の来訪があったことです。出場だけではない、仲間の応援や、お客様として音楽祭を見に来てくださることの輪ができていたことに感激しました。

今年のゲストはのこぎり音楽のアンドレさん。初めて生で聞く演奏に目からウロコでしたが、柔らかく、また芯のある音色に心地よく聴かせて頂きました。なんと伴奏パートナーはアンドレさんのお母さま。めずらしい親娘競演だったそうです。アンドレさんも万葉の歌音楽祭の審査にも加わっていただき、とっても楽しかったみたいです。

 

 

 

 

 

 

 

最終回と言うことで皆様に惜しまれる機会となりましたが、明日香村、犬養万葉記念館から生まれた新しいイベントとして、「歌は心の音楽」「声に出して味わうことでより万葉歌が伝より理解できる」という犬養先生のご論通り、万葉朗唱から万葉歌唱への新たな形が生まれ、定着したことの実感に17回の歴史と重みをしみじみ感じます。今後はコンクールではなくても、多くの人にそれぞれのスタイルで楽しんで万葉を歌うことを続けていってくださることを心から願っています。(岡本)