『昭和萬葉集』をご存知でしょうか。

今年で73回目の「敗戦記念日」を迎えた。天皇陛下も退位を控えられた、平成時代最後の戦没者慰霊の記念式典に参列された。『万葉集』には、防人歌に代表されるように、国家のために召集されて任務に就く東国の若者の建て前と本音と両方の姿や心を読み取れる歌群がある。そのように日本人に刻まれた戦争の記憶を『昭和萬葉集』にも多く残されている。

『昭和萬葉集』は、昭和54年から55年にわたって刊行された、『万葉集』と同じく全20巻(別巻1巻)の全集である。

昭和1年から半世紀にわたる激動の時代につくられた短歌を、時代を追って分類、配列した一大アンソロジー収録歌と言える。また、収録の基準も『万葉集』にならい、天皇の御製から家人、一般人に至るまで1052万首から選ばれた5万首が掲載されている。昭和50年間の時代変動とその時々の日本人の生活感情を記録する、いわば庶民の生の声の集大成である。

巻一、 昭和時代の開幕 ・巻ニ、 軍靴の響き ( 満州事変 )・ 巻三、 ニ・ニ六事件 ( 軍国主義の台頭 )・巻四、 日中戦争 ・巻五、 大陸の戦火・ 巻六、 太平洋戦争の記録・巻七 、山河慟哭 ( 焦土と民衆 )・ 巻八、 復興への槌音・ 巻九、 冷戦の谷間で ( ー朝鮮戦争ー )・巻十、 独立日本・ 巻十一、 戦後は終った (テレビ時代の幕開け )・ 巻十二、 都市化の時代・巻十三、 60年安保の嵐・ 巻十四、 東京オリンピック・ 巻十五、 昭和元禄・ 巻十六、 万国博と70年安保・巻十七、 日中国交回復・ 巻十八、 高度成長の終焉・ 巻十九、 戦後日本の総括・巻二十、 昭和50年の回顧・ 別巻 昭和短歌・資料編

編集顧問に土屋文明、土岐善麿、松村英一、選者には木俣修、窪田章一郎、佐藤佐太郎ら9名。出版にあたって当時の大募集の規模に加えて、昭和という時代が「すべてが忌まわしい戦争に集約されている」ことから、時代状況がこの歌集に特別な性格を与えている。「8月」は日本人には「原爆」「終戦」など、先の戦争を思い起こす季語ともいえる月であり、テレビ、メディアでも「戦争の悲惨さ」「核兵器の廃絶」などを取り上げ、「人類の罪を再び犯してはならない」ことを語り継ぐ特集番組なども多い。こうして、この『昭和万葉集』にも先人の心の叫びや、体験が生々しく歌われており、「歌」があらためて私たちに平和への思いを強くさせてくれる。犬養万葉記念館には、『昭和萬葉集』全集が犬養先生の所蔵本として寄贈されているが、書庫を整理しながら久しぶりに手に取ってみて、胸に去来するものがあった。

『万葉集』以降、1000年以上を隔てて庶民の歌が集められた国民的歌集『昭和萬葉集』をぜひ一度ご覧頂きたく、ご紹介させて頂く。犬養万葉記念館でぜひご覧ください!

「誰やらが 書きしか母と いふ文字の 机の隈に 薄く残れる」

「さがし物ありと 誘ひ夜の蔵に 明日征く夫は 吾を抱きしむ」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA