明日香小学校3年生の郷土学習(明日香学)見学会によせて

明日香村では、明日香小学校・聖徳中学校と1校ずつしかない義務教育を、9年の一貫教育として教育行政を進めている。そして、地域の特別授業科目に「明日香学」というカリキュラムがあり、明日香村の伝統芸能への理解や、明日香村ならではの体験授業を通して、子供たちが少しでも地元「ふるさと明日香村」への意識が高まるような教育が組み込まれている。

去る10月29日、明日香小学校3年生が犬養万葉記念館を訪れてくれた。たった30分だけの見学であったが、かつて犬養万葉記念館で私と3年生とが出会ったことで「万葉かるた」授業が生まれたり、こどもたちが「万葉朗唱」の体験をして「さおとめセブン」という、将来万葉朗唱を継承していってくれる子供たちが生まれた。今回も久しぶりの見学案内を受け入れる側の私たちが心弾んだ。1学年が班に分かれて明日香村のいくつかの施設を見学していたようで全員ではなかったが、恐る恐る入館してきた子供たちもすぐに馴染んで、私の話をメモを取りながら聞いてくれた。私はもともと子供たちの音楽教室の先生だったので、子供たちと対するのは大歓迎で、子供たちの反応が興味深かった。

犬養万葉記念館を訪れたのも初めてという子がほとんどで、明日香村村民へのアプローチや絵画展・書道展を通して記念館への誘いを図っているが、やはりまだまだ浸透していないようだった。しかし、「赤米の実り」「たばこの箱で作られたカルタ」「ぬばたまの実」など、目で理解できるものは素直な驚きや感動があったようで、それだけでも十分だと感じた。図書室もあるし、マンガの本もあるよ。ピアノもあるよ。ご飯も食べられるよ。と話し、「また来てね」というと「明日きま~す」と調子のよい返事。初めて犬養万葉記念館に入ってみて、また来てみたいなと思ってくれれば幸いと思う。

辛口で締めくくらせて頂ければ、私たちはいくらでも子供たちのための企画やイベント・出張講座など努力をしているつもりだが、明日香村の対応、教育委員会の積極的な誘導、小学校・中学校の先生方の消極性には歯がゆい思いがする。観光客や外部のための目線より、明日香村を今後背負っていく子供たちへのアプローチや教育の方がずっと必要ではないのかなと感じている。

世界遺産登録に『万葉集』のふるさとであることを含めたコンセプトであるならば、村民を挙げての明日香村を理解するための努力をしてほしい。犬養万葉記念館を指定管理する私たちの役目は観光客だけのものではないと自負している。(岡本三千代)